ある"二乗"-UNCLE "SHOWA"番外編

「叔父さん、新年おめでとうございます」
「なんだ丑雄か、明けましておめでとう」
「暮れから好天続きですね。こんな正月は久しぶりです」
「そうだな。まさに新しい年に変わった感があるな」
「去年はイヤなニュースばかりでしたからね」
「コラ!去年のことを言うと鬼が泣くぞ」
「そうでしたっけ?まあいいや。でも今年は一段と厳しいってみんな言いますよね」
「言わせておけばいい。そういう奴らはきっと今年も駄目だろうよ」
「叔父さんはそうは思わないと?」
「おうよ。最初に言い訳する奴は大嫌いだからな」
「でも世界的に不景気だし、国の政治もグダグダしてるし、プラス要素がありませんよ」
「その通りだな」
「じゃあ良くなる見込みはないじゃないですか」
「あのな、丑雄よ。人間というものは不思議なものでな、計算通りにはいかないんだよ」
「と言いますと?」
「例えばお前が1の能力があるとして、部下に0.6の能力がある奴が付いたとする」
「はあ」
「その場合、ふたりでできる仕事は1+0.6=1.6になるか?」
「いやあ、足を引っ張られてしまうから・・」
「そうだろ。実際は1×0.6=0.6になるはずだ」
「なるほど」
「ふたりで一人前の仕事をするためにはどちらも1の能力が必要なんだ。だからさっきのように片方が0.6だったらもう片方は1.7くらいの能力が必要なんだな」
「まあそこまで極端じゃないですけどね」
「人間が組んで何かをやるにはこの原理が働くから、社会は常に不満がたまるわけだ」
「ああ、どんなに優れた人がいてもなかなか良くならないのはそういうことですかね」
「個人と社会の違いはそこだな。だから社会のレベルを上げるのは並大抵のことじゃないんだ」
「良く分かりました。でも叔父さんが今年を楽観してるのは何故ですか?」
「昔、フォークジャンボリーというのがあってな」
「??」
「そこで加川良というフォークシンガーがこんなことを言った。『何にもできない奴が集まると何かができるんじゃないか』って」
「はあ」
「要するに、何かできる奴が集まっても互いに利害を考えてしまうから、結局はろくなことができないんじゃないかということだ」
「なるほど」
「今みたいにみんながマイナスな気分でいるときは、逆にプラスな何かが生まれるはずだ」
「マイナス×マイナスでプラスになるということですか?」
「そう、マイナスの二乗だな」
「でも実際にそうなりますかね」
「先行き不安だ、収入源だと倹約するからますます世の中が悪くなる。こういうときこそバァーッとやらなくちゃ駄目なんだ」
「じゃあぼくに年玉でも下さいよ」
「それはいやだね」
「バァーッとやるんでしょ」
「いろいろ事情があってな。そうだ、小林麻美に『ある事情』という歌があってな」
「誤魔化さないで下さいよ。昭和の話はまた今度でいいですから」











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