2015年2月 1日 (日)

2015中森明菜

昨年8月の『オールタイム・ベスト』『歌姫ベスト』発売から、まさかの紅白出場。
年明けの新曲とカバーアルバム発売まで、わずか数ヶ月ではあるけれど、2010年からの空白を一気に埋めるような中森明菜ブームの再来にとまどいつつも嬉しくてならない。

 

もちろんベスト盤2種のヒットで本腰を入れた感のあるユニバーサルとNHKの好意的なプッシュがあってのことだが、中森明菜という希有な才能を持つシンガーに再びスポットライトがあたったことはなによりである。

 

そして新曲の「Rojo -Tierra-」は20年ぶりのオリコンベスト10入りを果たし、カバーアルバム『歌姫4-My Eggs Benedict-』も好調なセールスを記録している。
熱心なファンはもとより、ワーナー時代の明菜を知らない世代にも新鮮な衝撃を持って受け入れられていることが、現役のシンガーであることの証であろう。

 

「Rojo-Tierra-」は浅倉大介作曲のEDMナンバーだが、この曲での明菜の歌唱は熱っぽく、巧みにビブラートを効かせてすばらしいものだ。
川江美奈子と明菜自身による歌詞はスケールが大きくメッセージ性に富んだもので、初めて聞いたときに「GAIA 〜地球のささやき〜」(アルバム『la alteración』収録)を思い出してしまった。
「DIVA」から「CRAZY LOVE」と聞いてきた耳には自然な進化と思えるこの佳曲は制作中と伝えられるオリジナルアルバムへの期待を否が応でも高めさせてくれる。
そして鳥山雄司のギターと明菜の歌が無機質な打ち込み音源に肉と血を与えている。

 

明菜復活を確信させてくれたのは同じCDに収録された「La Vida」だった。
沖仁のフラメンコギターとパイレだけをバックの歌唱は繊細でありながら力強く、不遇な名作「Resonancia」をしっかりと継承しているものである。
この曲のレコーディングは昨年の12月であろうから(沖仁のTwitterによれば)、最も最近の明菜を聞くことができるわけで、この状態であればなにも不安はない。

 

1月28日に発売された『歌姫4-My Eggs Benedict-』は非常に良くできたラブソングカバー集である。
NHKの特番で一部「スタンダード・ナンバー」と「長い間」は公開されていて、中森明菜のカバーシリーズは安定した水準であることはわかっているつもりだった。
しかし、アルバムが届いて通しで聞いてみるといろいろな発見があっておもしろかった。
以下、簡単に各曲の感想を…

 

「スタンダード・ナンバー」は南佳孝の曲で、『歌姫3』の「スローなブギにしてくれ」と同じ松本隆の作詞である。
ジャジーな伴奏をバックに明菜ならではのアンニュイな気分で歌われる。

 

「真夜中のドア 〜stay with me」は今は亡き松原みきの代表曲で、本歌が大好きだった私は今回一番期待していたナンバーでもある。
オリジナルの都会的でピュアな気分とはがらりと変わった南国ムードなアレンジにのせて落ち着いた感じで歌われる明菜のバージョンは最初びっくりさせられた。
だが繰り返し聞いていくうちに、オリジナルでは近い過去の出来事として歌われている別離がカバーではとても遠い過去の出来事として歌われているように思われた。
ピュアだったダメージも今では懐かしい思い出なのだ。

 

「Lovers Again」はこのアルバムでベストの楽曲かもしれない。
アコースティックなアレンジも素晴らしいし、明菜の歌唱も初冬の風のように軽やかな中に淋しさを感じさせるものだ。
何よりもEXILEの曲がこんなにリリカルなものであったことに驚かされた。

 

「長い間」は特番でも歌われたし初回限定版のDVDにも収録されている。
明菜自身が4年以上のブランクをファンにお詫びしているように聞こえて、つい涙腺がゆるくなる。
オリジナルの透明な歌声にかわって90年代以降の明菜の特徴である親密な歌声が聞かれる。

 

「ハナミズキ」も同様に語りかけるような親密な歌声で歌われる。
この親密な歌声は最初のカバーアルバム『歌姫』の「魔法の鏡」のときに感じたもので、『SPOON』収録の「今夜、流れ星」でよりはっきり聞くことが出来る。
楽曲によって様々な歌声を使い分ける明菜であるが、シンプルな楽曲が歌声一つでがらりと表情を変えるのはマジカルだ。

 

「愛のうた」倖田來未のオリジナルよりもさらりと歌われるこの楽曲も耳に心地よい。
アルバムのサブタイトルであるMy Eggs Benedictの感じが一番伝わる曲かもしれない。

 

「fragile」出だしは何の曲だかわからなかったほどオリジナルと印象の異なる楽曲。
ELTのバージョンからエッセンスだけを抽出して歌われたような明菜の歌唱が新鮮で、フレーズのあちこちにはあの親密な感じが漂う。

 

「接吻」はライブDVD『Special Live 2005 Empress at CLUB eX』でも収録されていたが、よりゆったりとしたテンポで歌われ、明菜の声をじっくり味わえる楽曲になっている。

 

「そして僕は途方に暮れる」は「1⁄2の神話」以来の大沢誉志幸の楽曲。ボサノバ調のアレンジで驚かされる。
オリジナルの緊迫感とは対照的ななにげない日常感がけだるい感じでスケッチされていておもしろい。

 

「やさしいキスをして」ピアノだけをバックにモノローグのように歌われるこの楽曲はドリカムのオリジナルの色彩感とは異なり、白黒写真のような、しかし陰影はより強く感じられる。
明菜の歌手としてのスタンスが明確にあらわれた楽曲であり歌唱である。

 

「雪の華」中島美嘉の透明感のあるオリジナルよりもずっとソフトに歌われるこの曲は、しかしながらサビのフレーズでキュッと声をしぼりだすところとか、明菜ならではの歌い回しが印象的だ。
きっとレコーディングの時に明菜の前に置かれた歌詞の紙には赤いラインがいっぱい引かれてるんだろうな。

 

(文中敬称略)

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2013年8月21日 (水)

Life of their own

中森明菜の「DIVA」に次のような一節がある。

悲しみさえその力に変えていける take your way」作詞:Ryohei Matsufuji

このフレーズに聞き覚えがあると思って思い出したのは「原始、女は太陽だった」の一節。

「太陽が昇る 裸の胸に いま哀しみさえ生きる力に変えてく作詞:及川眠子

この逆境からの再生というイメージは中森明菜本人に通ずるものがある。

しかしマイナスからプラスにもっていくためには想像以上の消耗を伴うのも事実である。

確かに彼女は失意の中から立ち上がるだろうが、喜びにとどまることがまた困難であろうことを誰しもが予想するのである。

おいしい水」という歌がある。

何も感じない女になれたら ときめきと引き換えて かまわない」作詞:Mariko Okabe

自分の繊細さゆえに辛く苦しい思いをするのである。

それが当たり前になっていることを嫌悪しているのだろうが、そこから抜け出せるわけではない。

何も感じない女になんてなれっこないことは本人がいちばん分かっている。

同様の状態は「赤い花」においてよりいっそう過激な願望となる

「あたしをいっそ切り裂いて 何も感じないほどの 傷をつけて去って行ってよ」作詞:川江美奈子

そう、彼は何もせずに去って行った。

そしてそのことは彼女の心により深い晦渋をもたらす結果となった。

中森明菜にはこうしたHeart Breakな内容の歌がとても多い。

もちろん作詞家にとってHappyな出来事よりもそうでないほうが詩になりやすいということは差し引いても‥

弱さを見せないためにはどうすれば良いか。

虚勢をはるというのとはまた別なのだろうが、ある種の演技が必要になるだろう。

Trust Me」の歌詞にこんな部分がある

「だけど少しは冷たいふりをしないと私らしくない」作詞:夏野芹子

私らしさとは何だろうか。

嘘つき」にも次のような歌詞がある。

「何度も確かめてる 鏡に映してみる 私らしさを纏うための術作詞:川江美奈子

この歌ではそんな自分の本当の姿を相手にわかって欲しいという願いが歌われている。

セルフイメージは自分自身で作り上げたものなのだ。

Crazy Love」の歌詞にもあるように。

Crazy Love つまずいて Crazy Love 立ち上がり

  Crazy Love またひとつ Crazy Love 手に入れる

        私だけのカラー 自分自身の人生作詞:遠藤幸三、Miran:Miran

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2013年8月18日 (日)

Desire for flight

人間は泳いだり走ったりできても飛ぶことはできない。

昔から「飛翔」に対する憧れは人類共通の物であり、ダヴィンチの考案した飛行器具類やブランクーシの一連の飛翔する彫刻たち、さらには天使の持つ翼もみんな憧れから生み出された物である。

中森明菜の楽曲の歌詞にもしばしば飛翔への思いや憧れが歌われている。

Love Is The Mystery

翼ひろげて

光る海を 越えるわ

すこし不安よ

「北ウィング」作詞:康 珍化

赤い鳥が逃げた Fly Away

愛のカゴをあけて 空へと

赤い鳥が逃げた Fly Away

銀の涙 翼ぬらして

赤い鳥が逃げた

いつかふたりで見る 夢をさがして

「赤い鳥逃げた」作詞:康 珍化

翼を広げて 火の鳥が行くわ

地の果ては 何処までか 答えてはくれないの

「SAND BEIGE -砂漠へ-」作詞:許 瑛子

そうよ Save You, Save Me

鳥のように

もいちど 空

飛べそな メロディーだね

「La Boheme (ラ・ボエーム)」作詞:湯川 れい子

折れた翼 広げたまま

あなたの上に 落ちて行きたい

「難破船」作詞:加藤 登紀子

だけど私は鳥よ

生まれ変わる前はきっと

La Liberte

この背中 証しがあるわ

Ma Liberte

わかるでしょ? ふたつのほくろ 翼のように

「La Liberte」作詞:森 由里子

あなたの背骨に Kiss してあげたい

翼のもがれた傷跡みたい

昔むかし産まれた時はみんな天使だったのに

独りぼっちで生きていくうちいつか飛べなくなるわ

「無垢」作詞:田久保 真見

折れた翼 もとに戻せるなら

二人の夢も また変わるのに

「帰省~NEVER FORGET~」作詞:atsuko、鈴 康寛

1984年から1998年までの楽曲だが、何人もの作詞家たちが翼や鳥について、また飛翔のイメージを描き出している。

とりわけ「難破船」と「帰省」に歌われている「折れた翼」は飛翔の持つ危うさをあらわす重要なキーワードだと考える。

あるいは飛びたくともかなわない無力さのあらわれでもあるのだ。

大気圏外に飛び出すロケットならいざしらず、翼や羽を持つ鳥や昆虫たちは飛び続けるわけにはいかない。

いつかは自分の足の着く場所で休息しなければならないのだ。

つまり飛翔とはAからBに移動する手段に過ぎない。

それでも人が飛ぶことを願うのは、地面(という現実)からどれだけ離れられるかということへの思いが強いからなのだろう。

乾いてた 砂漠走り抜けて

潤った 翼広げる場所へ

GET ANYPLACE...HOWEVER

羽広げて

GET ANYPLACE...HOWEVER

見下ろせたら

「I hope so」作詞:中森明菜

Flight …… ひらく扉

Tonight …… 翼みたい

ふたり Fly! Fly! Fly! 飛び立つの Sky!

I don't care 自由な空へ

「Crazy Love」作詞:遠藤幸三、Miran:Miran(中森明菜)


この2曲は中森明菜が作詞に関わっている楽曲だが、本人も飛ぶイメージを好んでいるように思われる。

そしてその思いがポジティブなものであることも伝わってくるのでうれしく思う。

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2013年2月10日 (日)

DIVA その2

『DIVA』についてまた書く。
最初聴いたときにこのアルバムのすごさがピンとこなかったことは前に書いたが、これは全くもって私の勉強不足によるものである。
時系列的に中森明菜を追いかけていれば、ここに至る経緯が必然であったことは自明なのだが、そうしなかったことに誤りがあった。
とくにほとんどの曲の和英ミックスの歌詞の絶妙さが分かるまでは、何回聞きこんだことだろう…
まあそれは置いといて、各曲について簡単に書いてみる。

オープニングの『GIVE TAKE』の低いヴォーカルから入る凄み。かすれ気味のサビの格好良さはどう言えばいいのだろうか。
キャッチーなメロディだけど、この声が伝える静かな炎のような感情が何かただならぬものの始まりを告げている。

タイトル曲の『DIVA』は明菜ならではの囁きとシャウトのコントラストが見事な楽曲だ。アルバムヴァージョンは凝縮されて短いものだが、1曲目からの流れではこれが正解なのだろう。
なお、シングルヴァージョンでは1分ほど長く、アルバム初回限定盤のボーナスディスクに収録されたmichitomo remixヴァージョンでは7分以上の長さで展開されている。
それぞれ聴き応えがあり、どれがベストか甲乙つけがたいが、結局すべてのヴァージョンを聴くのが最良かもしれない。

3曲目におかれた『thinking of you』は一瞬『VAMP』を彷彿とさせるミディアムテンポの楽曲。
懐かしい明菜の声がここでは聴かれ、息詰まる展開のアルバム中では最初のオアシスのようだ。

4曲目の『REVERSE』はタイトル通りコーラスを伴ったフレーズが繰り返し歌われる。3曲目が部屋の中を思わせるのに対して、雑踏の中に足を踏み入れたような攻撃性を感じる楽曲。

5曲目にはじめて全部日本語詞の『逢えなくて』が置かれている。『あの夏の日』を思い出させるしみじみとした歌唱。
洋から和へと、中森明菜の世界は果てしなく広いことに気づかされる曲。

6曲目は一転してハードなブギーの『X lady』。なんていっても明菜の余裕あるヴォーカルが格好いいこと。
T Rexっぽい楽曲だがアレンジも良くて、この曲をステージで歌う明菜を想像するだけでも血が騒ぐものだ。

7曲目の『HEARTBREAK』はこのアルバムではいちばん一般受けしそうな楽曲で、かといって古くささはなく、何故シングルがこちらじゃなかったのかとも思わせる。
おそらく中森明菜の新しい面を打ち出すにはスケールが常識の範囲にとどまっていることがシングルを『DIVA』に譲った一因だろうと…
しかしながら名曲であることに間違いはなく、別歌詞同曲の『Heartache』、さらにそのremixヴァージョンの3曲は素晴らしい。

8曲目の『with』はうねるようなバックの演奏も、明菜のヴォーカルも、そのグルーヴ感ではアルバム随一かもしれない。
こういう曲を聴いていると、中森明菜はほんとうに上手いシンガーであることが実感できる。

9曲目は情感あふれるサビが印象的な『茜色の風』。とても温かい気持ちにさせてくれる歌声。
ロマンティックな曲を歌うと明菜はいつでも少女のようだな。

エンディングに相応しいしっとりとした『Going home』でアルバムは終わる。
ここでも情感に流されることなく、しっかりとした歌声が聴かれる。

全十曲、トータル時間は38分という今どきのCDには珍しい短さだが、これだけの濃い内容だけに充実度はハンパではない。
3分あまりの楽曲にこめられた明菜の意気込みがビシビシと伝わってくる。
聴くほどにさまざまな発見があるのが中森明菜のアルバムであるが、『DIVA』はその最たるものだろう。

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2013年2月 3日 (日)

Romantique

iTunesに収録した中森明菜の曲で、プレイリストを作ってみた。
『true album akina 95 best』にならって、ロマンティックな楽曲ばかり集めてみたのだが、如何なものだろうか。
1曲目『ガラスの心
1988年の『WONDER』からこの曲を。オリジナルの『不思議』のヴァージョンも捨てがたいのだけれど、ヴォーカルが聞こえる方がやはり良いだろうということで。
明菜の情感を抑え気味の歌唱がすばらしい。
2曲目『今夜、流れ星
1998年の『SPOON』から大好きな曲。
可憐という言葉がぴったりなこの曲だけど、現実とファンタジーが混在したような歌詞が素敵だ。
アコースティックなアレンジも際立っている。
3曲目『LIER
1989年の『CRUISE』から、まずこのヒット曲。
楽曲、アレンジ、歌唱のバランスがこれほど完璧な曲は明菜の楽曲の中でも希有だろう。
アルバムの流れで聴いているとドラマティック度が増すのだけれど、単独に聴いてみると意外にしっかり歌われていることに気がつく。
『true album akina 95 best』で再録されているが、この曲はオリジナルがいちばんだと思う。
4曲目『魔法の鏡
1994年のカバーアルバム『歌姫』から荒井由実のこの曲。
中森明菜と井上陽水の楽曲は相性が良いといわれているが、ユーミンの楽曲とも抜群じゃないだろうか。
少なくとも、この曲での歌唱はまさに魔法がかけられたかのように心に響く。
5曲目『こんなにも・・・
1999年の『will』はいろいろな経緯もあり評価も低いアルバムのようだが、アルバムとしてのコンセプトはともかく、凡曲ばかりではない。
この曲はパーフェクトな完成度とは思わないが、ときどきハッとさせられる瞬間がある佳曲じゃないだろうか。
6曲目『嘘つき
2006年の『DESTINATION』からは文句なしにこの曲。
アルバムの項でも書いたとおり、明菜のささやくような歌唱の頂点が聴かれる。
ほんの少しの風でも飛んで行ってしまいそうな羽毛を思わせる歌。
7曲目『雨の日は人魚
『SPOON』からもう1曲はリリカルなマンドリンの音色が印象的なこの曲。
曲としてはやや単調なきらいがあるけれど、サビでの切ない歌唱が良い。
8曲目『陽炎
1993年の『UNBALANCE+BALANCE』から本人作詞のこの曲。
鳥山雄司の乾いたアレンジをバックに切々と歌われ砂漠の中のオアシスを思わせる。
このアルバムは同じメロディの『永遠の扉』ではじまりこの曲で終わるから完結性を持っているのだが、再発版ではシングルなどの6曲が追加されて明菜プロデュースのコンセプトがうやむやになってしまった。
9曲目『ベルベット・イースター
2009年の『フォーク・ソング2 〜歌姫哀翔歌』からユーミンの楽曲。
『魔法の鏡』もそうだったけど、暗めの印象が強いカバーアルバムの中で、ユーミンの曲が聞こえるとほっとさせられる。
ファンタスティックな歌唱とオリジナルにほぼ忠実なアレンジが素敵な小曲。
10曲目『予感
1985年の『BITTER AND SWEET』収録の飛鳥涼作品であるが、ここでは1995年に再録された『true album akina 95 best』のヴァージョンを選びたい。
オリジナルよりもしっかりとした歌唱にストリングスのアレンジが秀逸。
最後の「答えをください もう疲れたの」は10年間の色々な出来事を思い起こさせて感慨深い。
11曲目『雨が降ってた…
『CRUISE』収録のラストの曲をここでも最後に置いてみた。
『難破船』同様に若草恵のアレンジがドラマティックで素晴らしい。
祈りにも似た明菜の歌唱も静かな炎のようなこの曲を100%生かしている。
初期の楽曲でもロマンティックで素敵なものが多数あるのは承知の上での選曲。
ファンそれぞれに意見はあるだろうが、今の私は上記11曲通して聴いているとなかなかに心地良い。

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2013年1月28日 (月)

In real life

中森明菜」が彼女の本名であることは誰でも知っている。

しかしこのことがどれだけ大変なことなのかを想像することは難しい。

彼女はステージでも、ステージを離れたプライベートでも中森明菜である。

もちろん、観客の前で、TVカメラの前で、きれいにメイクアップされた姿と、仕事を終えて素に戻った彼女の姿は違っているのだけれど。

だから中森明菜の写真集『MY LIFE』には素のままの彼女が写っているけど、これもTVやステージで知ってる彼女と同じ中森明菜であり、どちらも実像なのだ。

何枚ものツアーライブがDVDで発売されていて、ステージ前や幕間、ステージ後の映像には明らかにステージとは違った一面がうかがえるのだが、これも全部含めての中森明菜なんですよということかもしれない。

歌を歌う限り、彼女は中森明菜自身であり、それはどんな歌を歌っていても変えられない。そうして30年。

かつてアレン・ギンズバーグがディランの歌に「こんなに人間が自分を赤裸々にさらけ出したことがあったのだろうか」といった趣旨の文を寄せていたが、当のディランだってロバート・アレン・ジンママンという人間が演じていることを思うと、中森明菜の歌は(全部がそうとは言わないが)さらに彼女自身をさらけ出したものになる。

だからCDなどを聴いていて、ふとした瞬間に生の明菜を感じることがある。

それは無意識のうちに聴き手を揺さぶったり、涙腺をゆるませたりするのだ。

同じく本名で通したアイドルに「山口百恵」がいるが、実質の活動は7年半という短さだ。

聡明な彼女は自分の道を真っ直ぐ歩き、芸能界のドアを閉めたのだった。

明菜はそうしなかった。いや、そうさせてもらえなかったのかもしれない。

「唄い続けてる限り 同じ道を歩いたあなたへ

              このかすれた声消えるまで」『帰省』

PS.上記のギンズバーグがライナーノートを書いたのはディランのアルバム『DESIRE』であるのが何だか面白い。

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2013年1月26日 (土)

VAMP

1996年、前作『true album akina 95 best』から1年ぶりにリリースされたのはわずか4曲入りのミニアルバム『VAMP』だった。
詞・曲はそれぞればらばらなクリエイターによるものであるが、クラブ系のサウンドで統一されていて、耳に心地よい。
しかしこのアルバム最大の特色は中森明菜がかつてないほどセクシャルなことであろう。
1曲目の『PRIDE AND JOY』は岡田陽助のギターをスパイスにミディアムテンポで展開される演奏をバックに明菜のアンニュイな歌声が溜息のように響く。
「Kiss してよ ソコ」のリフレインがなんとも悩ましく、「騒がしい 毎日は カギをかけて 締め出すから」という部分でサウンドがフェイドインするのもしゃれている。
2曲目の『EGOIST』はきわどい内容の歌詞をやや上から目線で歌う明菜のヴォーカルが格好良い。
「You can't say you love me / You love what you're doin' to me」のサビはさすがに上手いなぁとうならせられる。
このアルバムではもっとも明菜らしい曲かもしれない。
但し、最後の「すれ違うだ〜け〜」の部分ではビブラートをかけるすれすれのところでセーブしているのが大人っぽい。
3曲目『CRESCENT FISH』は退廃的なサウンドに乗って無表情に歌われるクールな曲。
こういう曲では本当に明菜の低音のヴォーカルが生きるものだと思う。
「WE'RE JUST FALL IN LOVE」から始まるサビはすごく魅力的で、5分弱のこの曲だが、20分くらい続けば良いのにと思わせる。
4曲目はこのアルバムで最長の『METROPOLITAN BLUE』で、ややジャジーな演奏にのって歌われる。
ここでの明菜の声は他の曲と違って優しさにあふれたもので、噛みしめるように淡々と歌っているのを聴いていると、こちらの気持ちも穏やかになってくる。
はじめてこのアルバムを聴いたときは、あまりにも刺激がないこの曲の良さが分からなかった。
何度も聞いているうちにしみじみと沁みてくるような、そんな渋い曲。
このミニアルバムが次作『SHAKER』(傑作!)につながるものであることは間違いないが、ここに表現されたセクシャルな部分が最新作である『DIVA』に受け継がれていることのほうが重要だろう。
現在再販されていないようだが、中古屋で見つけてたら絶対買っておくべき1枚だと思う。

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2013年1月16日 (水)

DIVA

昨年、中森明菜の素晴らしさを再確認して、iTunesで真っ先にDLしたのは『フォーク・ソング 2 ~歌姫哀翔歌~』と『DIVA』だった。

奇しくも2009年に連続リリースされたアルバムで、明菜の作品としては現時点において最も新しいものであった。

『フォーク・ソング 2 ~歌姫哀翔歌~』は聴いてすぐに気に入り、また、不安にもさせられたアルバムであるが、これはいずれまた書いてみたい。

もうひとつの『DIVA』だが、最初聴いたときはサッパリ分からなかった。

もちろん、ここに至るまでの90年代から2000年以降までの彼女のイバラの道(と、あえて書こう)を全く勉強していなかった私が至らなかったのだが。

その後、『DIVA』は初回盤のCDとシングルバージョンを購入して、聞きこんだ。

個々の楽曲についてはまだちゃんとしたことを書くまでに至っていないのだが、このアルバムを理解するのに『Femme Fatale』『VAMP』『DESTINATION』の3枚のアルバムが重要なポイントを占めたことは間違いない。

また別の意味では『不思議』『Cross My Palm』もその仲間に加えられるべきかもしれない。

とりあえず今いえることは『DIVA』が中森明菜にとって過去の作品の(全部とは言わないが)集大成であり、同時にこれからのスタートを切るにふさわしい作品であるということである。

※暮れから体調を壊しているので、もう少し聞きこんでから、またこのアルバムについて書いてみたい。

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2013年1月 7日 (月)

赤い花

フォルクローレ風の前奏に続いて乾いたギターの調べが奏でられる。

そして明菜の歌が始まる。

「ひとりきり すくいあげる 指のあいだ こぼれてゆく日々

      あのひとが 残したのは 光りさえも 呑み込む砂漠よ」

乾ききった情景が切々と、しかし感情を押し殺して歌われていく。

『赤い花』は2004年5月にシングルリリースされた。

同年7月にリリースされた『初めて出逢った日のように』(オリジナルはパク・ヨンハ)と歌詞が異なる姉妹曲である。

もちろん曲は同じなので、どちらも良いできばえの楽曲なのだが、聴後の衝撃度は圧倒的に『赤い花』のほうが大きい。

これは両曲のアレンジ、歌詞の違いもさることながら、明菜の歌唱法の違いによるところがいちばんの要因である。

『初めて出逢った日のように』は男の視点でじっくりと歌われている(詞は松井五郎)のだが、それとは逆に『赤い花』は不幸な女の歌である(詞は川江美奈子)。

そしてこうしたシチュエーションを歌わせると中森明菜以上にうまい歌手を思い出すことは難しい。

淡々とした乾いた歌唱は、しかし、サビの部分で炎を燃やす。

「今はお願い おしえないで すべてを捨てて行ける理由を

      遠く輝いた 愛までも 嘘と言わないで

   最後の涙が落ちたなら 二度とあなたが見えないように

          歩き続けるの どこまでも 錆びた景色の中を」

かすれた声のシャウトが染みる。儚いけれど痛みを伴う歌だ。

80年代終わり頃の明菜の声ではこの歌を歌うことはできても、聞き手に伝えることは難しかっただろう。

この楽曲での歌唱は21世紀にはいってからの中森明菜の作品では間違いなくベストに入れるべきものだと思う。

2005年発売のDVD『Akina Nakamori Special Live 2005 Empress at CLUB eX

に収録されたヴァージョンでは楽曲と一体になった明菜の歌う姿に震撼させられる。

ここではもはや聴衆がいることすら忘れたように歌を吐き出すひとりの女性が映し出されているのだ。

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2013年1月 5日 (土)

DESTINATION

『DESTINATION』は2006年にユニバーサルシグマからリリースされた。

前作『I hope so』から3年ぶりのオリジナルアルバムで、中森明菜本人も「嫌いな曲は1曲もない」と言っていた力作である。

このアルバムを特徴づけているのは打ち込み主体のダンスナンバーで、『GAME』『花よ踊れ』の2曲に特に顕著なカーニバル的ともいえる華やかなイメージは2000年代になって聞かれなかったものである。

明菜のヴォーカルもメリハリのきいたもので、いかにも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

オープニングの『紅夜』、『Seashore』『鼓動』『夜の華』は全てベースライン主体の楽曲で、明菜の低音のヴォーカルと呼応して魅力的だ。

どちらかというと同じようなタイプになりがちなこの4曲をニュアンスを変えながら歌い分ける明菜の技術は素晴らしいと思う。

個人的に2曲目の『嘘つき』がベストだと思うのだが、ここではがらりとスタイルを変えて囁くような明菜の歌い方が、過去の作品で様々な実験を試みてきたのだろうが、その完成型を見たように思える。

うっかりするとダンサブルな楽曲に埋もれてしまいそうに儚い存在だけど、歌詞の一句ごとに微妙な色づけをなされて歌われるこの曲の魅力は計り知れない。

さらにもう1曲、囁きの歌が『眠れる森の蝶』であるが、楽曲に不釣り合いなほど長大な歌詞をガラス玉を転がすように歌う明菜のヴォーカルが美しい。

それでいて所々にハッとさせられる瞬間があるのがこの歌の聞きどころだ。

9曲目の『LOVE GATE』はパンチの効いたヴォーカルが聞かれる。

ここでもかすれ気味な明菜の低音がソウルフルでいい。

もしCDでなかったらこれをラストにしてよかったんじゃないかと思うのだが…

確かBOB DYLANも言っていたと思うのだが、CDになっていちばんの弊害はアルバムの収録時間が不自然に長くなったことで、結果として埋めていく楽曲全部ひっくるめたアルバムのカラーが曖昧になってしまう。

『DESTINATION』という傑作アルバムでも、ラスト3曲でほんの少しアルバムのカラーが変化しているように思える。

10曲目はシングルカットされた『落花流水』で、よくできた歌であることに異存は無いのだが、私にはかつての『AL-MAUJ』に通ずる違和感を覚えさせる。

松本隆の詞の世界にやや引きずられ気味のアレンジがそう感じさせるのかもしれないが。

続く『Only you』でソウルフルな路線に軌道修正するも、ラストの『Grase Rain』の濃厚なブルース感はむしろ次作のアルバム『DIVA』を予告するような楽曲に仕上がっている。

これも単独では絶品の曲で、ヴォーカリストとしての中森明菜の魅力爆発(特に低音域)といってもよいのだが。

ともあれ、収録された楽曲がどれも非常な完成度をもっており、現在の中森明菜のベストの歌唱が堪能できるという点では最高のアルバムに違いない。

これを聴いてもまだ「昔の明菜のほうが良かった」という人がいたら、そういう人とはサヨウナラと言うしかないな。

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