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2015年2月 1日 (日)

2015中森明菜

昨年8月の『オールタイム・ベスト』『歌姫ベスト』発売から、まさかの紅白出場。
年明けの新曲とカバーアルバム発売まで、わずか数ヶ月ではあるけれど、2010年からの空白を一気に埋めるような中森明菜ブームの再来にとまどいつつも嬉しくてならない。

 

もちろんベスト盤2種のヒットで本腰を入れた感のあるユニバーサルとNHKの好意的なプッシュがあってのことだが、中森明菜という希有な才能を持つシンガーに再びスポットライトがあたったことはなによりである。

 

そして新曲の「Rojo -Tierra-」は20年ぶりのオリコンベスト10入りを果たし、カバーアルバム『歌姫4-My Eggs Benedict-』も好調なセールスを記録している。
熱心なファンはもとより、ワーナー時代の明菜を知らない世代にも新鮮な衝撃を持って受け入れられていることが、現役のシンガーであることの証であろう。

 

「Rojo-Tierra-」は浅倉大介作曲のEDMナンバーだが、この曲での明菜の歌唱は熱っぽく、巧みにビブラートを効かせてすばらしいものだ。
川江美奈子と明菜自身による歌詞はスケールが大きくメッセージ性に富んだもので、初めて聞いたときに「GAIA 〜地球のささやき〜」(アルバム『la alteración』収録)を思い出してしまった。
「DIVA」から「CRAZY LOVE」と聞いてきた耳には自然な進化と思えるこの佳曲は制作中と伝えられるオリジナルアルバムへの期待を否が応でも高めさせてくれる。
そして鳥山雄司のギターと明菜の歌が無機質な打ち込み音源に肉と血を与えている。

 

明菜復活を確信させてくれたのは同じCDに収録された「La Vida」だった。
沖仁のフラメンコギターとパイレだけをバックの歌唱は繊細でありながら力強く、不遇な名作「Resonancia」をしっかりと継承しているものである。
この曲のレコーディングは昨年の12月であろうから(沖仁のTwitterによれば)、最も最近の明菜を聞くことができるわけで、この状態であればなにも不安はない。

 

1月28日に発売された『歌姫4-My Eggs Benedict-』は非常に良くできたラブソングカバー集である。
NHKの特番で一部「スタンダード・ナンバー」と「長い間」は公開されていて、中森明菜のカバーシリーズは安定した水準であることはわかっているつもりだった。
しかし、アルバムが届いて通しで聞いてみるといろいろな発見があっておもしろかった。
以下、簡単に各曲の感想を…

 

「スタンダード・ナンバー」は南佳孝の曲で、『歌姫3』の「スローなブギにしてくれ」と同じ松本隆の作詞である。
ジャジーな伴奏をバックに明菜ならではのアンニュイな気分で歌われる。

 

「真夜中のドア 〜stay with me」は今は亡き松原みきの代表曲で、本歌が大好きだった私は今回一番期待していたナンバーでもある。
オリジナルの都会的でピュアな気分とはがらりと変わった南国ムードなアレンジにのせて落ち着いた感じで歌われる明菜のバージョンは最初びっくりさせられた。
だが繰り返し聞いていくうちに、オリジナルでは近い過去の出来事として歌われている別離がカバーではとても遠い過去の出来事として歌われているように思われた。
ピュアだったダメージも今では懐かしい思い出なのだ。

 

「Lovers Again」はこのアルバムでベストの楽曲かもしれない。
アコースティックなアレンジも素晴らしいし、明菜の歌唱も初冬の風のように軽やかな中に淋しさを感じさせるものだ。
何よりもEXILEの曲がこんなにリリカルなものであったことに驚かされた。

 

「長い間」は特番でも歌われたし初回限定版のDVDにも収録されている。
明菜自身が4年以上のブランクをファンにお詫びしているように聞こえて、つい涙腺がゆるくなる。
オリジナルの透明な歌声にかわって90年代以降の明菜の特徴である親密な歌声が聞かれる。

 

「ハナミズキ」も同様に語りかけるような親密な歌声で歌われる。
この親密な歌声は最初のカバーアルバム『歌姫』の「魔法の鏡」のときに感じたもので、『SPOON』収録の「今夜、流れ星」でよりはっきり聞くことが出来る。
楽曲によって様々な歌声を使い分ける明菜であるが、シンプルな楽曲が歌声一つでがらりと表情を変えるのはマジカルだ。

 

「愛のうた」倖田來未のオリジナルよりもさらりと歌われるこの楽曲も耳に心地よい。
アルバムのサブタイトルであるMy Eggs Benedictの感じが一番伝わる曲かもしれない。

 

「fragile」出だしは何の曲だかわからなかったほどオリジナルと印象の異なる楽曲。
ELTのバージョンからエッセンスだけを抽出して歌われたような明菜の歌唱が新鮮で、フレーズのあちこちにはあの親密な感じが漂う。

 

「接吻」はライブDVD『Special Live 2005 Empress at CLUB eX』でも収録されていたが、よりゆったりとしたテンポで歌われ、明菜の声をじっくり味わえる楽曲になっている。

 

「そして僕は途方に暮れる」は「1⁄2の神話」以来の大沢誉志幸の楽曲。ボサノバ調のアレンジで驚かされる。
オリジナルの緊迫感とは対照的ななにげない日常感がけだるい感じでスケッチされていておもしろい。

 

「やさしいキスをして」ピアノだけをバックにモノローグのように歌われるこの楽曲はドリカムのオリジナルの色彩感とは異なり、白黒写真のような、しかし陰影はより強く感じられる。
明菜の歌手としてのスタンスが明確にあらわれた楽曲であり歌唱である。

 

「雪の華」中島美嘉の透明感のあるオリジナルよりもずっとソフトに歌われるこの曲は、しかしながらサビのフレーズでキュッと声をしぼりだすところとか、明菜ならではの歌い回しが印象的だ。
きっとレコーディングの時に明菜の前に置かれた歌詞の紙には赤いラインがいっぱい引かれてるんだろうな。

 

(文中敬称略)

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