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2013年1月 5日 (土)

DESTINATION

『DESTINATION』は2006年にユニバーサルシグマからリリースされた。

前作『I hope so』から3年ぶりのオリジナルアルバムで、中森明菜本人も「嫌いな曲は1曲もない」と言っていた力作である。

このアルバムを特徴づけているのは打ち込み主体のダンスナンバーで、『GAME』『花よ踊れ』の2曲に特に顕著なカーニバル的ともいえる華やかなイメージは2000年代になって聞かれなかったものである。

明菜のヴォーカルもメリハリのきいたもので、いかにも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

オープニングの『紅夜』、『Seashore』『鼓動』『夜の華』は全てベースライン主体の楽曲で、明菜の低音のヴォーカルと呼応して魅力的だ。

どちらかというと同じようなタイプになりがちなこの4曲をニュアンスを変えながら歌い分ける明菜の技術は素晴らしいと思う。

個人的に2曲目の『嘘つき』がベストだと思うのだが、ここではがらりとスタイルを変えて囁くような明菜の歌い方が、過去の作品で様々な実験を試みてきたのだろうが、その完成型を見たように思える。

うっかりするとダンサブルな楽曲に埋もれてしまいそうに儚い存在だけど、歌詞の一句ごとに微妙な色づけをなされて歌われるこの曲の魅力は計り知れない。

さらにもう1曲、囁きの歌が『眠れる森の蝶』であるが、楽曲に不釣り合いなほど長大な歌詞をガラス玉を転がすように歌う明菜のヴォーカルが美しい。

それでいて所々にハッとさせられる瞬間があるのがこの歌の聞きどころだ。

9曲目の『LOVE GATE』はパンチの効いたヴォーカルが聞かれる。

ここでもかすれ気味な明菜の低音がソウルフルでいい。

もしCDでなかったらこれをラストにしてよかったんじゃないかと思うのだが…

確かBOB DYLANも言っていたと思うのだが、CDになっていちばんの弊害はアルバムの収録時間が不自然に長くなったことで、結果として埋めていく楽曲全部ひっくるめたアルバムのカラーが曖昧になってしまう。

『DESTINATION』という傑作アルバムでも、ラスト3曲でほんの少しアルバムのカラーが変化しているように思える。

10曲目はシングルカットされた『落花流水』で、よくできた歌であることに異存は無いのだが、私にはかつての『AL-MAUJ』に通ずる違和感を覚えさせる。

松本隆の詞の世界にやや引きずられ気味のアレンジがそう感じさせるのかもしれないが。

続く『Only you』でソウルフルな路線に軌道修正するも、ラストの『Grase Rain』の濃厚なブルース感はむしろ次作のアルバム『DIVA』を予告するような楽曲に仕上がっている。

これも単独では絶品の曲で、ヴォーカリストとしての中森明菜の魅力爆発(特に低音域)といってもよいのだが。

ともあれ、収録された楽曲がどれも非常な完成度をもっており、現在の中森明菜のベストの歌唱が堪能できるという点では最高のアルバムに違いない。

これを聴いてもまだ「昔の明菜のほうが良かった」という人がいたら、そういう人とはサヨウナラと言うしかないな。

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