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2007年9月30日 (日)

From me to You

BOB DYLANの作品で何がいちばん好きかと聞かれたら、やはりアルバム『Blood on the Tracks(血の轍)』を挙げるだろう。
中でもどの曲が好きかと言われれば迷わずに『Tangled Up in Blue』と答えるだろう。

軽快なアコースティック・ギターのリズムに乗って曲は始まる。

ある朝はやく 太陽は輝き
ぼくはベッドに横になって
彼女が少しは変わったか
まだ髪は赤いかを考えていた

彼女の家族は もし2人が一緒になれば
きっと暮らしは大変だろうといった
ママの作ってくれた服が気に入らなかったし
パパの収入も十分じゃなかった

そして語り手は東海岸を目指すのであった。
重要なことは、この出発は歌の始まりではなくて主人公の最後の旅であることだ。
そして2番の歌詞からは過去に出会った様々な女性のことが歌われていく。

初めてあったときに彼女は結婚していた
が、すぐに離婚することになっていた
ぼくは彼女をドロドロから助け出したのだろうが
すこし強引だったようだ
(中略)
彼女は振り返りぼくを見た
ぼくが歩き去ろうとしていたときに
彼女が肩越しに言うのが聞こえた
「いつかまた会うことがあるわ
街角でね」

彼女と別れたあと、語り手は北の森林地帯で臨時雇いのコックをしたり、ニューオリンズに行き漁船で働いたりしていた。

しかしぼくがひとりでいた間ずっと
過去はぴったりと背後に寄りそっていた
沢山の女性に会ったが
彼女が頭から離れなかった

語り手は今度はトップレスバーで働く女性に出会う「あなたの名前はなんだったかしら」儚いすれ違いが描かれる。
そしてまた別の女性との場面に歌詞は移り変わる。

彼女はストーブのバーナーをつけて
ぼくにパイプを勧めて言った
「あなたが、こんにちは、なんて言うとは思わなかったわ」
「口数が少ないようね」
そして一冊の詩集を開き ぼくに渡した
それは13世紀のイタリアの詩人が書いたものだった

その言葉のひとつひとつが真実に思えた
そして燃えている石炭のように輝き
全てのページからあふれ出ていた
まるでぼくの魂の中で
ぼくからあなたにあてて書かれたように
ブルーにこんがらがって

この歌詞で唐突に出てくる「あなた」こそ、最初の歌詞の「彼女」にほかならない。
全ての歌詞で「She」という代名詞で歌われていることによって、その対象が曖昧にされていた女性が、この歌詞で鮮明な実像に変えられるのであった。
続く歌詞で語り手は最初の彼女への接近を試みる。

だからぼくは戻っていくんだ
なんとか彼女とよりを戻さなければ
昔ふたりが知っていた人たちはみんな
今のぼくには幻にすぎない
(中略)
ぼくたちはいつも同じことを感じていたんだけれど
ちがった角度から見ていたんだ
ブルーにこんがらがって

こうして語り手は彼女を捜す旅に出るわけで、最初の歌詞にまた戻るわけである。
展開は見事であり、それぞれの歌詞もDYLANの歌唱も演奏も素晴らしい。

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