以下の文章は前に萩原健一さんのファンの方からいただいた新聞の切り抜き記事をそのまま書き写したものである。
記事の内容から1975年7月の記事であることがわかる。
では30年以上前にタイムスリップしてみよう。
ショーケン(萩原健一)の軌跡と奇跡
タレントと俳優と役者をどう使いわけるのかはっきりしないが、グループ・サウンズで歌っていたタレントが、映画やテレビドラマに出はじめると俳優になり、その演技力を買われると"役者根性"ってな言われ方をする。タレント出身俳優ショーケン-----萩原健一の昨今の"注目のされ方"はすごい。そのターレント(才能)の軌跡を追いながら、ブラウン管とスクリーンでの演技の秘密をさぐり、証言を集めてみた。
周囲の証言
「彼が岡田以蔵役で画面に出ると、それまで殺到していた"いつから出るか"という投書はパッタリ。その代わり、いま本人が局へきているかって電話がかかりっぱなしなんです」(NHKテレビ「勝海舟」スタッフへの反響)
「映画"青春の蹉跌"の試写アンケート結果は、彼を見たいという動機が41%、次が何となくで32%でした」(東宝)
彼-----つまり萩原健一への"人気"のバロメーターである。
今月25日で25歳。中学3年の時、仲間とグループ・サウンズ「ザ・テンプターズ」を組み、高校中退後、それを再編成してプロに。
前から芝居への興味
当時のライバル・チーム「ザ・スパイダース」のリーダーだった田辺昭知氏(田辺エージェンシー社長)は「歌っているころから、彼の中に芝居への興味があったんじゃないかな。身につけるものやファッション感覚の中にもそんなものが見受けられた」という。
この"芝居への興味"を、まずテレビが発見した。初の本格的テレビ出演となった「明智探偵事務所」(NHK)の成島庸夫プロデューサーは「彼の持つ甘さ、ナイーブさが出ればと思って起用した」と2年前を振り返る。
「明智・・・」と並行して作られた斉藤耕一監督の映画「約束」(松竹)で彼は"現代の若者を表現する演技"を決定的なものにした。
「この映画を見てすごいと思った。本当に現代のフィーリング、いまそのものだった」と「太陽にほえろ!」(日本テレビ)の岡田晋吉プロデューサー。「何よりも彼の体当たり的演技に感心した」
既成役者にない演技
"体当たり"といういい方は、タレントも俳優もわりとたやすく口にする。ショーケンの場合、その実体を周囲はどう見たか。
「真剣さに魅力がある。既成の役者がやれない芝居を思い切ってやるね」(日本テレビ「くるくるくるり」で共演した伴淳三郎)
「脚本の分析など真剣そのもの。こちらも熱気を感じた」(「勝海舟」の古閑三千郎プロデューサー)
彼の演技にじかに接した人たちは「ナウなフィーリング、現代を生きている」と声をそろえる。
こうした感覚を生む彼の演技を「青春の蹉跌」の神代辰巳監督は「自分の演技プランを持っている。今度の映画の中でも、この場面のあと、何かやってみろよと私がいうと、彼が自分で考えてやっていく、そんな場面がいくつかある。その演技プランにはまれにみるセンスがあるし、フィーリング・プラス現実の表現法を知っているユニークなやくしゃだ」。
鋭い人間観察が基盤
こうした演技は、持って生まれたものなのだろうか。岡田プロデューサーは「ペンとノートから頭で覚えたのではなくて人間観察から生まれた体験的演技だからリアリティーがある」という。
全力で走るシーンを撮る場合、普通の俳優は技術で早く走ったように見せるが、彼はとにかく全力疾走をする。ピストルを撃ち続けた場合、その反動で手がしびれてピストルを取り落とすことがあると聞けば、テープを腕に巻いてしびれさせる。電車に乗れば、足を踏まれた人がどんな表情をするか観察している。
「彼はレッスンに通ってうまくなってるんじゃない」という田辺氏の言葉は''俳優養成機関出身"のいかめしい肩書きなしに"体得"した演技の奇跡というべきか。
「従来の映画から抜け出せる役者」(神代監督)
「可能性はものすごく大きく、見当がつかない」(岡田氏)と今後への期待は大きく、40以上も年上の伴淳三郎は「オレはあいつの残したそばのつゆだって飲めるよ」と彼の人間性にもほれ込んでの賛辞である。
もっとも「うまくなるってことより、いつ見てもショーケンはいいなあって思うような俳優であってもらいたい」という田辺氏が、案外ファンの声を代表しているかもしれない。
自身のための演技論
録画を終えたテレビ局の喫茶店でサンドイッチを食べながら-----
「若者のフィーリングって、随分誤解されてるんだなあ。泣いたりわめいたり、格好ばっかりつけたがるけど、もっと内面的で、人間的なんだよ。オレ自身は、それを客観的に見てるつもりだ。いま撮ってる2つのテレビのうち、一方は内面的なものがあるけど、もう一方はここが(心臓を抑えて)ないねえ。めちゃめちゃだよ。オレだってギャラは決して安くないんだから、そんなドラマなら別な俳優つかえばいいんだ」
「オレのいいとこは考え過ぎること。悪いところも考えすぎること。仕事には神経質でね。自分が全部やってるわけじゃないんだけど。でも俳優になってよかったな。歌手だと歌曲にすべてが左右されるけど、役者はそうじゃない。やって面白いな」
「本当に悩みを打ちあけられる友だちなんていないよ。みんな一人なんじゃない?悩みごとあっても、打ちあけるとき、オレはもう結論出してるからね。それに、そんなことしたら楽にはなるかもしれないけど、でもいった場合、もうわびしくて生きていけないんじゃない?ことによったら、女房にもいわないよ。そんなのを描いたドラマをやらしてくんないかなあ」