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2005年11月13日 (日)

QUADROPHENIA

jimmyTHE WHOの『四重人格(QUADROPHENIA)』がリリースされたのは1973年で、私は中学生であった。
実はそれより前に『TOMY』を聴いてかなりガッカリしていたので、このアルバムにも大した期待は持っていなかった。
地元のレコード店で白黒グレーのこのアルバムを手にしたときに、妙にずっしり重かったのに少々戸惑いつつ、とりあえず買って帰ったのであった。

2枚組のLPと写真集で構成されたこのアルバムは素晴らしいできばえであった。
最初の曲「I Am The Sea」はいきなり波の打ち砕ける音が聞こえる。
彼方からTHE WHOのメンバー4人のそれぞれのテーマが断片的に聞こえてくる。
・HELPLESS DANCER(ロジャー・ダルトリーのテーマ)
・IS IT ME(ジョン・エントウィッスルのテーマ)
・BELL BOY(キース・ムーンのテーマ)
・LOVE REIGN O'ER ME(ピート・タウンゼントのテーマ)
切れ目なく2曲目の「The Real Me」に。
”ほんとうのぼくがわかりますか?/お母さん”...そうこのコンセプトアルバムの主人公JIMMYは多重人格者なのである。
それぞれの人格は先の4つのテーマとなって表され、アルバム全体のあちこちに表出する。
白黒のアルバムジャケットはスクーターに跨ったJIMMYの後ろ姿、そのスクーターから飛び出た4つのミラーにはTHE WHOのメンバーの顔が映っている。

付属の写真集がアルバムに劣らず素晴らしい。
いかにも英国人といった顔付きの青年(JIMMY)をモチーフに綴られる写真の一枚一枚が音楽のイメージを膨らませてくれる。
3曲目のインストゥルメンタル「Quadrophenia」はピートのギターを中心に4つのテーマがメドレーで演奏されるが、スクーターで街を疾走するJIMMYの写真を眺めながら聴くと最高である。
THE WHOのメンバーが女の子とじゃれ合いながらHAMMERSMITHの劇場から出てくる姿を少し離れたところでスクーターから降り、ひざまずいて見つめるJIMMYは「The Punk And The Godfather」の情景だろうか。

モッズ(mods)について詳しくは知らない。
THE WHOが彼らのヒーローであったことも。
そんなことは別にしても、このアルバムには多感な少年が青年に成長していく頃に抱えている怒り・失望・ためらい・期待などに満ちあふれている。
いわば男の子ならば誰でも通過するであろう普遍的なテーマである。
「I'm One」で歌われる無力感 ”ぼくはGibsonを手に入れた/ケースはなかったけど/でも日焼けした顔さえ手に入れることが出来ない/ぼくはボロを着て群衆にまぎれる/指は不器用で/声は大きすぎる”。
「Sea and Sand」の”ここ海と砂の間では/計画通りに何もいかない”というイメージに感銘して1人で九十九里の海に出かけてしまったこともあるし。

アルバムの最後の曲「Love Reign O'er Me」での絶唱”愛だけがぼくを支配する/愛がぼくに雨を降らせる”は勝利の歌ではないけれど明日につながる敗北の歌だ。
このアルバムから何度勇気をもらったことだろうか。
音楽的には4つのテーマによってアルバム全体がまとめられ、あたかもワーグナーの楽劇にみられる循環形式を踏襲しているかのようである。
ストリングスや効果音の使い方も見事で、ピート・タウンゼントの優れた音楽性がトータルに現れている。
CDはRemaster版で音がクリアーになっているけど、写真集が小さいのが難点。
だからLPは手放せない。

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コメント

ビートルズ、R・ストーンズなどとは比較にならないほど過小評価されていましたね。
(そう言う意味ではキンクスも不人気でした)
どうしてもmodsとの関連で語られることが多かったので、色眼鏡で見られていたのでしょうか。
ロジャー・ダルトリーのストレートなヴォーカルも、キース・ムーンのクレイジーなドラムスもJ・エントウィッスルのロボットみたいなベースも好きですし。
何より、P・タウンゼントの音作りには敬服していました(・ω・)

投稿: Reザジ | 2005年11月14日 (月) 18時17分

『Quadrophenia』の時点でザ・フーは、まだデビュー10年も経っていないはず、、、凄いです。

英国的な“モッズ”というテーマや、“何にも似てない”オリジナルな音が、逆に『Tommy』なんかに比べると、評価を長らく遠ざけてたような気もします。
特に当時の日本で、ザ・フーは人気がイマイチだったとよく聞くのですが、実際どうだったんでしょう。

投稿: さかな | 2005年11月14日 (月) 17時56分

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