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2005年10月23日 (日)

弦楽四重奏

Beethoven天候はすぐれないものの、このところ朝晩の気温もグッと冷えてきて、ようやく秋らしくなってきた。
こんな季節には室内楽がふさわしい。

私の嗜好の主たるものは交響曲を中心とする管弦楽曲である。
なかでもマーラー、シューベルト、ブルックナーには30年以上も愛着を感じてきた。
ベートーヴェンはどうか。
9曲の交響曲はさまざまな指揮者・管弦楽団のヴァリエーションで親しんできた。
また、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、歌劇フィデリオ、ミサ・ソレムニス等の大作もそれぞれに愛着があって捨てがたい。

周知のとおり、ベートーヴェンの主要な作品群は3つの柱を持っている。
その1が交響曲(9曲)、その2がピアノソナタ(32曲)、そしてその3が弦楽四重奏曲(16曲)である。
なかでも弦楽四重奏曲はベートーヴェンが最晩年まで書き続けたことでも理解できるように、終生のライフワークであった。

16曲の弦楽四重奏曲は制作時期によってさらに前期・中期・後期に分類される。
中期にはいわゆる「ラズモフスキー四重奏曲」の3曲が含まれていて、これは交響曲第三番「エロイカ」や、「運命」として知られる第五番の交響曲らとともにベートーヴェンの最も精力的な時期の創作であった。
私もかつてはこの時期の作品に最も惹かれていたが、最近はめっきり聴かなくなった。
グイグイと聞き手をひっぱっていく展開にちょっと疲れたからかもしれない。

後期のベートーヴェンは別人である。
聴覚が失われてしまったことにより、彼の創作はより精神的なものとなった。
それは音楽を超えてより高度なもの(祈りに似た)に近づいた。
「ハンマークラーヴィア」などの後期のピアノソナタ、特に第三十二番ハ短調などにその感じは顕著に表れている気がする。
そして第十二番から第十六番までの5曲の弦楽四重奏曲はベートーヴェンの到達した最終点である。
この5曲はすべてが独自の性格を持ちながらも、互いに呼応し合う部分があって、どれ一つ欠かせないものである。
私が一番好きな曲は第十六番(作品135・ヘ長調)であるが、古典的な4楽章の形を取りながらも一つ一つの楽章がとても深い。
それでいて表面的には穏やかで快活な印象を与えられるのが信じられない。
不思議な曲である。

かつて『失われた時を求めて』のマルセル・プルーストは自室に弦楽四重奏団を招き、ベートーヴェンやモーツァルト、フォレなどの室内楽曲を演奏させたという。
そんな贅沢はできないけれど、秋の夜長にヘッドフォンで室内楽曲を聴きながら内省するのもまた良いものであろう。

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